医薬翻訳者の洋書キッチン/ The Book Kitchen

翻訳者による洋書レビュー / Book review by a medical translator

英語上達への道は人それぞれ、目的もさまざま

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対極的な英語上達への道

 

僕は高校卒業後、アメリカのオクラホマ州というところに4年程留学していました。

 

高校の卒業が3月。大学が始まるのは8月。それまでは現地の語学研修所で目標の TOEFLスコアを目指す、という流れです。

 

その語学研修所には日本人留学生が比較的多かったのですが、今日はその中から2人の友人の話をします。

 

僕は他人の英語の勉強方法に意見を言うことは基本的にしないのですが、それはこの2人を知っているからだと思います。

 

タツの場合

 

和歌山出身、地元進学校を卒業した僕の当時のルームメイトです。1年浪人です。

音楽専攻で大学入学後は地元のジャズバーでよくピアノをよく演奏していました。

 

彼はいわゆる、日本の英語教育王道?の道をたどった人です。

語学研修所に入った時点で目標 TOEFLスコアを持っていました。

 

彼の最大の特徴は、特別な試験(TOEFL)対策はあまりしていないという点です。

 

大学受験用の一般的な教材がメインで、TOEFL用の単語集だけは対策として使用していました。

大学が始まる頃には TOEFL は高スコアでしたが、それは語学研修所で過ごした期間に単純に比例していたのだと思います。

 

一度 TOEFL(リーディング)の勉強法についてアドバイスを求めたのですが、「英語は英語。テクニックじゃなくて普通に文法を勉強すること」という達観したお言葉を頂戴いたしました。

 

スピーキングに関してですが、当然話せないし、リスニングも生の英語は難しいと言っていました。

 

リスニングに関しても授業のみで、テレビを積極的に観るタイプではありませんでした。

基礎力がしっかりあったために、授業だけで十分だったのかもしれません。

 

大学入学後はあまり接点はなかったのですが、2年後には相当高いレベルのスピーキング能力がありました。

 

タツの場合は真面目な日本人学生の理想な道のりに思えます。

 

しっかりとした文法知識をもとに、地道に語彙力をつけていき、リスニング、スピーキングも慣れによって上達させていく。

 

ナオの場合

 

名前が思い出せません。適当につけました。

 

神奈川出身。米軍基地の近くに住んでいたらしく、学生時代はアメリカ人のお客さんが多い店で接客のバイトをしていたらしいです。

 

語学研修所入学時点で、一番英語が話せた日本人です。

 

ただ同時に、TOEFLの点数が非常に悪かったのも彼です。クラス分けはテストの点数で決まっていたのだと思うのですが、彼は下の方のクラスにいました。

 

当時の僕からしたらネイティブとの会話も普通に交わしており、ペラペラに見えました。僕の英語力の低さ故、実際にどのくらいのレベルで彼が英語を話していたのかは全く分かりませんが、リスニングも全く問題ないようで、憧れでした。

テレビを観る時でも、他の留学生とは違い、しっかりと理解して楽しんでいました。

 

印象に残っている出来事があるのですが、それは一度彼が、There (  ) pens. の (  ) に何が入るかを友達に聞いていた、というものです(もしかしたらちょっと違うかもしれません)。

 

かなり衝撃で、文法なんていらないのか!と思ったのと同時に、

なんでこれだけ聞けて喋れるナオはこんな基本的な文法知識がないんだ?

逆にタツTOEFL の点数があれだけ高いのになんで現地の人の言っていることは分からないんだろう?などと英語の勉強方法について考えさせられた時期でもありました。

 

ちなみに語学研修所を卒業するのが一番遅かったのは彼でした。

 

彼の特徴は、ネイティブが言語を習得していく過程と似たステップを踏んでいった、というところでしょうか。

 

日本語の文法用語は全く分からず、語彙力は非常に高かったと記憶していますが、日本人が通常学校で習うものとは大きく異なっていました。絵本やアニメなどでは耳にする、日常で子供から大人までが使う語彙やフレーズが中心で、また口語表現を非常に高いレベルで使用することができていたのではないかと思っています。

 

大学入学後はダブルメジャー(2つの専攻)で、スペイン語とビジネス系を勉強していたのですが、きっちり4年で卒業しました。

 

他の留学生達の勉強方法

 

ほとんどの人がやっていた勉強方法、それが「ノートを持ち歩く」です。

気になる表現や知らない単語に出会ったらすぐにノートに書き留める、という単純なものですが、圧倒的に効果的です。

 

テレビも大人気です。

ドラマを観る人、僕のようにアニメしか見ない人、色々いました。

現在だと YouTube が一番かもしれません。

 

勉強法とは違うかもしれませんが、日本語が書いてあるテキストは高校卒業と同時に使わなくなった人がほとんどでした。

 

「英語の勉強をしているのに日本語の解説の方が多いというのは気持ち悪い」と言っている人がいて、なるほどと感心し僕もこっそりと捨てたのを覚えています。ただ、単語集は日本から持ってきているものを使っている人もいました。

 

意外かもしれませんが、王道の勉強法だと思われる新聞を読むニュースを聞くという勉強をしている人達はほとんどいなかったように思えます(覚えてないだけかもしれません)。もちろん普通に生活していれば目にしたり耳には入ってくるのですが、積極的に勉強に活用している人は非常に少なかったです。

恐らく理由は「つまらないから」だと思うのですが、よく分かりません。

ちなみに僕もこの勉強方法は全く合いません。

 

The New York Times や Scientific American といった雑誌ならいくらでも読めるのですが、TIME はつまらなくて数ページしか読むことができません。好みの問題なので時事やニュースが好きな人にとっては最高の勉強方法だと思います。

 

試験対策ですが、僕の同期達は「英語力をどう上げるか」に集中していて、過去問を解いている人は多くいましたが、対策本というのをやっている人は少数派でした。

ただしこれは留学生という環境も影響しているのかもしれません。英語に触れる機会が圧倒的に多い人とそうでない人では勉強方法は異なるものかもしれません。

 

ベストな勉強方法はあるのか?

 

この2人を紹介したのは当時の僕にとっては身近な存在で、対照的だったからです。

 

他にも、文法知識がほとんどなく、単語も全く知らないのにとにかくノリで喋り倒していつの間にか英語力が全体的に上がっていた友達もいます(ナオとは違い英語力は当時はひよこレベルです)。

 

 

英語の勉強方法に正解はあるのでしょうか。

文法の知識はどれ程必要なのでしょうか。

 

 

僕には分かりません。

将来、エビデンスを元に解明される可能性も低いのではないかと思います。

 

文法は中学レベルぐらいは必要だと個人的には思っているのですが、どうでしょう。

 

上で紹介したタツの例もありますし、アウトプットのみでのしあがってきた強者もいます(部屋ではきちんと勉強していたかもしれません)。

 

 

とりあえず何が言いたかったのかというと、あまり勉強方法のことで人に振り回されても良いことはない、ということです。

 

他の人がやっているから、誰かに自分の勉強方法を馬鹿にされた、推しの YouTuber がやっていた、色々あると思いますが、自分が楽しい勉強方法が一番間違いが少ないのではないかと思っています。

 

目標が違えば英語の勉強の仕方は大きく異なってきます。

例えば僕の場合は翻訳者という職業柄、スピーキングの勉強をごっそりと捨てています。必要性が全くない、というのが非常に大きいです。

 

Twitter を見ていると、TOEIC を楽しんで受けている人がいます。僕にはその感覚が「ジョギングが趣味です」と言っている人と同じくらい分かりませんが、全然良いと思っています。

TOEIC の試験当日、Twitter上 では「お互い頑張りましょう!」の文字が溢れかえっていますが、まさしく今からマラソン大会に参加していく人達を見るかの如く畏怖の念とと同時に愛おしさも抱いています。

 

英語の勉強くらい、楽しんで自分のやりたいようにやりましょう。