医薬翻訳者の洋書キッチン/ The Book Kitchen

翻訳者による洋書レビュー / Book review by a medical translator

日英翻訳を自由に語る【その1】~日英翻訳で一番重要なもの

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フリーランスとして日英医薬翻訳に毎日触れています。

小さくテーマを分けて(日本語ネイティブにとっての)日英翻訳について日々思うこと、気付いたことを綴っていきます。

 

 

質の高い翻訳を仕上げるのに一番重要なものとは何でしょう。

人それぞれ、分野、またその時々によって答えは変わりそうです。特に特許翻訳者だと意見は全く異なるのかもしれません。

 

専門知識、原文(日本語)読解力、英語力、検索力、翻訳を好きだと思える気持ち、色々ありそうです。

 

僕は現状、英語力と答えます。

翻訳者になる前からこの考えは変わっていません。

 

特にリーディングとライティングです。

この二つは一般的な大卒ネイティブ以上の力が求められると考えています。

 

納品前、自分の仕上げた翻訳物の質を最高まで高めるためにはどうすればよいでしょう。

 

翻訳の最終工程で行うチェックです。

 

ネイティブの目をもって訳文をチェックすることです。

原文と訳文の照らし合わせはもちろん、感覚的な違和感を見つけ出します。

 

日英翻訳であっても対象読者が日本人やノンネイティブという場合もありますが、基本的には英語ネイティブ向けに翻訳はなされます。対象読者の目を持つことは必須です。

 

ライティングについては、新聞雑誌でも見かけるネイティブがよくする(気にしない)文法上の誤用、レトリック、様々な文体の使い分けなど、幅広い知識を学ぶ必要があります。

ただしこれらは実はそれほど大したことはなく、ネイティブレベルのリーディングの力があれば案外すんなりと身に付けられるものです。

 

ではどうやってネイティブレベルのリーディング力を身に付けるのか。

 

僕が知っている方法は

日本語から可能な限り遠ざかる生活を送り、洋書を浴びるように読む

です。

 

 日本語から遠ざかることが重要なので、こんな本でも大丈夫なわけです。

 

もちろん今話題の文学作品

 もおすすめです。

日本語が書かれてさえいなければなんでもいいのです。ゴシップ雑誌でも大丈夫です。

個人的にですが、絵本が特に医薬翻訳に役立つと感じることが多いです。文構造がシンプルという共通点のせいかもしれません。

 

僕がツイッターで頻繁にやり取りしている人たち(翻訳者ではありません)は、毎日洋書を浴びるように読んでいます。

僕も含めて本人たちにとっては完全な趣味です。

その気になれば1年以内に日英翻訳者になれる集団です。

 

 

翻訳された文章を読むのは英語ネイティブの人たちです。

そしてその文章を最初に読むのは自分自身。

ネイティブの目を持つことが何より重要(もしかしたら来年にはこの意見は変わっているかもしれませんが)。

 

一応ですが、日英翻訳にはネイティブチェックという工程が翻訳会社にはあります。

英語ネイティブに訳文のみを読ませて英語の質をチェックしてもらうというものです。

今回は詳しくは述べませんが、機械翻訳の存在が大きくなっている現在、ネイティブチェック頼みの翻訳者の将来はかなり危ないと思っています。

 

もちろん専門知識も重要です。

専門知識については別に語ります。

 

それではまた次回です。