医薬翻訳者の洋書キッチン/ The Book Kitchen

翻訳者による洋書レビュー / Book review by a medical translator

教え子が東大に合格しました!

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とりあえず嬉しいの一言です。ホッとしました。

思ったより感動が少なかったのは、教え子の男の子が「受かりそうなオーラ」をずっと出していたからでしょうか。

 

と言っても、僕は1週間に1,2回 Line で勉強素材を与えるのがメインで、本人の努力と学校の環境が良かったおかげです。

 

生徒の男の子が通っている高校が進学校ということもあり、具体的な試験対策は9割学校に完全にお任せです。

そもそも自分はセンター試験を受けたこともなければ、2次試験という存在すら知りませんでした。

 

勉強を教えることになったきっかけ

 

一年程前、お知り合いからの紹介です。

僕が海外の大学を卒業していて、翻訳者をしているというので紹介されました。

 

一度本人とお会いし、それから勉強を教えることになるのですが、受験者側からすると相当に大胆な決断だと思います。

 

普通は受験に対して経験豊富な講師につくのが当然です。

彼の高校が受験対策をしてくれるというのが大きかったのでしょう。僕はあくまで勉強の手助け的な役割です。

 

僕は教えることにかなり消極的だったのですが、本人とご両親が何故かその気でした。

大学受験は僕にとって全くの未知だったため、報酬は一切いただかないということを条件にこうしてタッグ(?)を組むことになりました。

あくまで勉強のサポート、という立場です。

 

ちなみに僕が関わったのは2次試験が主で、センター試験は過去問も見ていません。学校での対策で十分だと本人も思っていたみたいです。

 

応援者

 

僕は人に厳しく接することや強制させることが苦手なため、家庭教師は向いていません。先生役としてビシバシ接することはなかったですし、具体的な対策は学校任せです。

立場としては応援、サポートする人です。

勉強に対する負担を軽くすることを第一に考えました。

 

1年ほどの付き合いになるのですが、会ったのは月に1回ほどで、ほとんどは Line でのやり取りです。ちなみに Line は原則英語です。

 

サポート

 

まずは本人の実力、過去問の分析に1週間ほど時間をかけました。

 

まず彼の英語力が自分の高校時代のものとは比べ物にならないほど高いことに驚き、東大英語の難易度におののきます(後にその考え方は若干変わりますが)。

 

東大英語は、英語能力 × 読解力(国語力)です。加えて高い情報処理能力でしょうか。

 

しばらくの間、こんな難易度の試験に合格させないといけないのか、というプレッシャーに茫然としていたのですが、よく考えれば僕が受験するわけではありません。

 

そもそも東大受験しようという人間ですから基本スペックが僕とは違います。高度な読解力と処理能力は備わっていると考えて問題ありませんでした。

 

僕に出来ること、出来ないことも分析しました。

結果、以下のことを主に勉強のサポートとして彼に与えることになりました:

 

 

YouTube

 

どうやったら英語にかける時間を短くできるだろうかと考えました。

大受験です。他の科目もあります。難易度は僕の想像のはるか上です。

 

復習したい科目や単元などを聞き、それに合った動画を紹介しました。

便利だったのが Crash Course。


Russia, the Kievan Rus, and the Mongols: Crash Course World History #20

 

こちらのチャンネルでは理系のコンテンツもあり、字幕も自動再生ではなく正確なためおすすめです。

受験に直接役に立つような知識面での細かさはあまりないですが、あくまで英語の勉強の一環として活用していました。本人曰く、復習や関連事項を想起するのに役に立ったとのことです。

 

他にも海外の数学動画、より専門的な内容を扱った動画も多数探し回りました。

僕は観てもいまいち分かりませんでしたが、彼はそこそこ理解していたようです。

 

英語の勉強をしながら他の科目も復習できるのでこれは正解でしたが、あくまで隙間時間を有効に活用するために用いました。

 

余談ですが、僕は YouTube で海外の動画を観る本数が半端なく多いのですが、大体は 1.2~1.7倍速で観ます。時間の節約になります。

 

洋書

 

過去問から判断し、フィクションは効率的でないと判断しました。ノンフィクションです。

使用したのは:

です。

 

これらの本は全部最初から最後まで完璧に読み通したわけではなく、僕のメモ付きの本を渡し、指定した箇所を読んでもらうようにしていました。

覚えた方が良い単語、フレーズは単語帳などに書き込んで覚えてもらうようにしていました。

 

ちなみに How Not to Be Wrong では数学も絡むため、僕が教えてもらうこともありました。

 

洋書は一部を抜粋して僕がリライトして渡すこともありました。

単語を試験で使われそうな易しめのものに書きかえたり、逆に文構造は難解なものに書き換えたりです。

 

洋書を読むことに慣れてきたある時、彼が普通の小説も読んでみたいと言うので僕の蔵書の中から選ばせたのですが、まさかの The Sidekicks Initiative です。

 

 

この本を読んだことがある日本人なんてほぼいないでしょう。

日本人ウケしなさそうなコメディ小説です。ただ本人が読みたいというので、Kindle を渡して語彙の弊害をなくすなどして、後は分からないところだけ Line で送ってもらうようにしてもらいました。

めちゃくちゃハマったみたいです。

 

その他

 

リライトした論文を渡したり、学校で配布されたプリントの問題を書き換えて再利用するなどしてました。

 

唯一サポート役らしいことをしたことといえば、英作文の添削です。

当初は多かった基本的なミスは徐々になくなり、最後の方では「あとは採点者次第」、というレベルにまで達していました。

 

洋書などからインプットして、それを意識的にアウトプットする力が高かったです。これも僕が言わなくても自分で勝手にやっていたことなので、教える方としてはこんなに楽なことはないです。

 

最後に

 

今回ここに書いた勉強方法は僕が彼に合わせて使ったもので、これならストレス少なく楽しく英語に接してもらえるかなー、と思いながら考えたものです。

誰にでも合うものではありません。彼は一貫して英語で目標点を80点以上としていましたが、半年以上経ってからは90点以上は問題なく取れそうな感じでした。

動画や洋書で勉強してもらうにしても非効率にならないように僕のメモ書きを読んでもらっています。

上に挙げた洋書を読めば合格する、というわけではないです。

安直に真似をすれば失敗につながります。

 

自分で感じた東大英語の特徴やよくある批判に対する考え方なども書こうと思いましたが、そういうことは英語教育に携わっている人のすることかなと思い、ここでは止めておきます。 

 

合格祝いにご飯をおごってくれると Line がきました。

名古屋の大須でから揚げをご馳走してくれるそうです(笑)。